銭湯雑誌「1010」誌に掲載されていたエッセイのバックナンバーです
古代ローマの時代、公共の風呂が各地に造られ市民に愛用されていました。有名なカラカラの大浴場は、3万6千坪の広さがあり、一度に1600人が入浴できたと言われています。帝国の繁栄とともに、公共の浴場施設がヨーロッパ中に広まっていたのです。古代ローマにおける公共風呂の役割の一つは、都市で働く役人、商人、軍人の心身を癒すということでした。そういう意味で、風呂が都市の主要施設だったのです。しかし、後に禁欲的なキリスト教の影響から急速に廃れ、現在ではその遺跡が残されているばかりです。
今回の夢銭湯「空と湯のドーム」は、そんな古代ローマ的な風呂が現代に復興したら、どのような形になるのだろう?という夢想からイメージしたものです。左下図にあるように、入浴者は洗い場から湯のカーテンをくぐり抜け、左上図の浴室空間に達します。そこに拡がるのは空と湯だけの壮大な空間です。ローマの時代のように、こんな浴場施設が都市の各地にあったとしたら、24時間働く企業戦士もこの空間で、体の芯からリラックスできるのではないでしょうか。
郊外型スーパー銭湯が流行るのもいいけれど、もっと壮大で、しかも都市空間にこそ、こういう風呂があればいいのに・・・いや、少なくとも21世紀の終わりまでには銭湯がそういう役割を果たす、そんな世の中にならないか・・・などと風呂好きが高じてあれこれ考えています。
(2000年 1010誌47号掲載バックナンバー)