銭湯雑誌「1010」誌に掲載されていたエッセイのバックナンバーです
「あ~気持ちいい!」こんな気持ちにさせてくれる銭湯の数が減っているのはなぜ?
90年代いわゆるニュー銭湯と呼ばれる新しい銭湯スタイルが登場したけれど、結局どの銭湯も似たようなデザインばかり。設備は充実したけれど、インテリアを含めた空間として魅力的なフロヤさんはほとんど無い。イヤ実際、銭湯で湯に浸かる事だけで十分に魅力的なのではあるけれど、時代の流れの中で生き延びてゆくためには「湯の設備」に頼るだけではダメなのだ。21世紀に向かう時代の流れの中で、いよいよ銭湯空間にも進化する時期がやって来たんじゃないだろうか。「銭湯を20世紀の遺産にするのはもったいなさ過ぎる!」銭湯文化を再活性化させる事は一筋縄ではいきそうに無いけれど、少なくとも空間としてもっともっと考えられる事があるんじゃないか?そんな思いから、この新企画コラム『ケンタローの夢銭湯』では銭湯文化の未来を見つめ、新しい銭湯空間のあり方について様々なアイデアを展開していきたいと考えています。
さて『ケンタローの夢銭湯』第一回のアイデアは、「銭湯といえばやっぱり富士山」という事で、関東地方銭湯の伝統名物「富士山のペンキ絵」を現代的にアレンジしてみました。題して「赤富士の湯」。浴槽の正面(洗い場の上)は半透明のガラスで造られていて、その上には富士山の写真がプリントされています。
このガラス面は建物の西側を向いているので夕方の光が逆光の富士山の姿を映し出し、室内を赤く染めます。またこのガラス壁には照明器具が埋め込んであり、夜間も光壁として浴室内を照らします。お客さんは浴槽にくつろぎながら富士山を眺めます。
こんな銭湯があったっていいと思いませんか?今の銭湯は、浴槽に入るとせっかくの富士山のペンキ絵が後ろになって見えませんが、このような形式なら目の前に大きな富士山を眺める事ができます。リニューアルの際に、違う富士山の姿を映し出しても良いかもしれません。
(2000年 1010誌43号掲載バックナンバー)