天神湯のオーナーさんの意向は「レイアウト変更しながらも、なるべく旧木造店舗のイメージを変えたくない」というものでした。今では貴重な宮造りの佇まいをして、否定すべくもないご要望です。そこでシンプルに設計コンセプトは「木造銭湯の原イメージの継承」と設定されました。レイアウト変更の面や、激しく劣化した仕上材・設備面では大掛かりに改修したものの、造作家具や構造体などは極力既存再利用(一時撤去してのち補修をして再利用)し、典型的な関東型銭湯の空間イメージを継承するデザインとしました。実際のディテールにおいては電球色照明への統一やプラ札の木札への変更、あるいは一部にガラスやポリカーボネイトなど現代的素材を黒子として用いたりと、空間全体のバランスさせる作業に専心しました。弊社実績の中でもアノニマスにもっとも近い設計内容となっているかもしれません。天神湯のようなオーソドックスな木造銭湯の原風景(=構造形式や佇まい)は、できる限り未来につなげていきたい銭湯の魅力のひとつです。