「日本人は、輸入した外国の文化を独自に発展、進化させることに長けている」
一般論としてよく語られる話です。18世紀末に初めて日本に輸入されたとされるサウナに関しても同様であると思われます。現代的なサウナ形式の起源は、北欧〜ロシア地方と言われており、64年東京五輪のフィンランド選手団が日本に持ち込んだことが契機となり日本でも普及しました。輸入されたサウナ空間は当初から日本的なアレンジがなされていたとされ、また利用者層や施設イメージも現代のサウナとは異なるものでした。その後、今日に至るまでさまざまなスタイルのサウナができており、何回かのブームを経て日本のサウナコンテンツは独自の進化を遂げてきたと言えます。
「サウナ東京」ではそうした日本で独自に進化したサウナ空間のバリエーションの豊かさに着目し、特に日本でニーズの高い、あるいは日本的なサウナ空間の展開類型を6つ設定しました。デザインコンセプトを「和流サウナ」とし、和の意匠をベースとしながらも、それぞれのサウナ空間が異なる個性を持ち、かつ引き立て合いながら、それでいて施設全体として統一感がある空間造りを目指しています。設定された6室のサウナバリエーションは以下となります。
○オートロウリュサウナ(蒸喜乱舞)
蒸喜乱舞:30m2超の大型オートロウリュサウナ室。耐久性を向上させる機能があるベンガラ塗装仕上げにより和のニュアンスを空間にもたらしています。
○セルフロウリュサウナ(手酌蒸気)
ケロサウナ:フィンランドのサウナ材として人気が高い「ケロ材」を原木で輸入して使用しています。セルフロウリュとしています。
○スチーム半身浴サウナ(戸棚蒸風呂)
戸棚蒸し風呂:江戸時代初期に流行ったとされている戸棚風呂をイメージし、「半身浴+蒸気浴」の形で再構築したサウナ室です。
○メディテーションサウナ(瞑想)
瞑想:木製の間仕切りによりサウナ室内を緩やかに隔て視線をカットすることで、瞑想状態に入りやすい空間造りを意図したサウナ室。
○遠赤外線ストーブサウナ(昭和遠赤)
昭和遠赤:昭和の時代には、熱くカラッとしたサウナが人気となっていた時代がありました。遠赤外線効果があり、現在でも人気が高いガス式ストーブを採用。
○クールサウナ(冷気浴)
冷気浴:クールダウンのための室温ゼロ℃強の冷温サウナ室。
この他、収容人員60名以上を誇る大型休憩(内気浴)スペースにはリクライニングチェアの他「畳ベッド」を設定し、炭酸泉風呂では檜笠木を使用するなど「和」のイメージを喚起させる素材を各所に配置しています。また水風呂は利用者の幅広い好みに対応すべく、3つの異なる温度設定による浴槽を配置しました。また2023年6月には地階に飲食および寛ぎスペースを増設するため、追加拡張工事を行なっています。
いわゆるサウナブームは日本だけではなく、世界に広がっています。「サウナをブームとして終わらせるのではなく、文化として定着させる」というクライアントの強い意志のもと「サウナ東京」は運営のみならずプログラムや内装ディティールにおいて日々マイナーチェンジを繰り返しています。こうした運営努力とこれにともなう利用者の質の向上が、本当の意味での日本のサウナ文化形成への貢献につながるのではないかと考えます。