今井健太郎建築設計事務所

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BUNKA-YOKUSEN

設計コンセプト:サウナエリアの充実
〜 サウナ室の拡張と外気浴場の新設 〜

渋谷から田園都市線でひと駅、池尻大橋駅にほど近い文化浴泉は、2011年に弊社が内装改修設計を担当させていただいた銭湯です。前回2011時の改修では「改修前の昭和レトロ風情を残し活用しながらも、改修部位にモダン和風なデザインエレメントを挿入することで、独特なレトロモダン空間を構成する」というコンセプトでリノベーションが行われました。高温に設定されたサウナのクオリティと、当時の銭湯としては珍しくチラーを使用し、きちんと冷やされた水風呂が好評をいただいてました。軟水化された井水を利用した水風呂の入浴感が評価されたのだと思います。銭湯サウナに対し、サウナーから一定の認知をいただけるようになった、最初の礎を築いた銭湯のひとつ、と言えるかもしれません。
そんな文化浴泉が12年ぶりのセミリニューアル工事を終え、2023年3月にリニューアルオープンいたしました。2023年の改修工事のコンセプトは「老朽化し、手狭になったサウナ部門をできる限り拡張し、充実させる」ということでした。文化浴泉や渋谷の改良湯などのように超都心部にある銭湯は敷地にゆとりがあることがなかなか少なく、サウナ後の休憩所(ととのいスペース)を設定する余裕がないケースが多々ありました。改修前の文化浴泉も、浴室や脱衣室の一部に休憩するスペースを見つけるのがやっと、という状況でした。
サウナ利用者が増え、水風呂も好評となったので、なんとか休憩所が設けられないか?ということでご相談をいただき、駐車場として利用されていたスペースを半屋外化し、男湯の休憩所として改修することになりました。また男サウナ室については隣接していた倉庫スペースを利用し、サウナ室の拡張をしました。女湯側については拡張のための余剰スペースがどうしても見つけられなかったので、脱衣室の一部を休憩所に設定しました(この部位は弊社担当外)。女湯サウナ室の方は機械室の余剰スペースを利用し、ほんの少しだけ拡張して内装を一新しました。
改修工事の難しさは、限られた予算内で多くの施主要望に応えなければならないというところにあります。文化浴泉では、サウナストーブをガス式から電気式に切り替えたのですが、受電増量のためキュービクルという受電変圧器の導入の必要に迫られ、ここにかなりの費用が割り当てられました。デザイン的にこだわった点は男性側の外気浴空間です。一見、外気浴場とわからない造りにも見えますが、室正面の壁に掘り込まれたスリットは、外部空間と直接つながっており、自然光と外気を室内に取り込んでいます。視覚的に光を際立たせるため、ミニマルなデザインによる空間としました。他にはないコンセプトによるサウナ後の「ととのいスペース」となったのではないかと自負しています。


文化浴泉
BUNKA-YOKUSEN

所在地:
東京都目黒区東山3-6-8
主要用途:
銭湯(普通公衆浴場)
竣工:
2023年3月
施工:
株式会社ニッコウ+株式会社川瀬鉄工所
設計:
今井健太郎建築設計事務所
写真:
今井健太郎
WEB:
文化浴泉公式