ひのきこうそぶろZEN
Hinoki enzyme bath ZEN
藤沢市の「ひのきこうそぶろZEN」は、桧パウダーを使用した酵素の発酵熱による入浴サービスを提供する施設です。本プロジェクトで設定されたデザインコンセプト「zen」とは、漢字で表現するところの『然・禅・全・繕・善』が持つイメージを統合した世界観を表現しています。このコンセプトを具現化するべく、全体の色調は陰陽の概念を表現する2極のトーン(白黒)で統一し『色』という視覚的刺激を最小限に抑えることで、訪れる人々が心の静寂〜禅的な世界観〜を受け入れやすい空間となるようデザインしています。内装は自然素材をベースとし、無駄なくシンプルな美しさを追求しました。照明についてはフロアライトを多用し、入浴中に光源が目に入らないよう床に近い位置に配置しました。これにより視覚的なリラックス効果を高められています。
酵素風呂の浴槽内に使用されている桧は、自然酵素を加えることで、分解される際に自然発熱を引き起こします。この発熱は、外部からのエネルギーを必要としない、極めて自然なプロセスです。入浴者は、桧のおがくずに身を包み、発酵によって生じた温かさ(60~70℃)に包まれることで、体の芯から温まります。入浴時間は15分程度。かなりの発汗量となりますから全体の利用時間は、休憩やシャワーを合わせて60〜90分程度になります。この温浴方法は、血行促進や代謝向上、免疫力の向上、美肌やアンチエイジングなど健康維持にも効果があるとされており、桧特有の芳香もリラクゼーション効果を高め、心身の緊張を解きほぐします。
さらに酵素風呂に関するエネルギー消費について、注目するべき点があります。日本の温浴文化には、サウナや温泉をはじめとして様々なスタイルの入浴カテゴリーがありますが、酵素風呂はこれらに比べ、圧倒的に少ないエネルギー量で運営運用が可能です。これは発酵の自然なエネルギーを利用しているためで、環境への負荷を最小限に抑えることができます。サウナのような高温が苦手な方は、心地よい温かさの中でリラクゼーションを楽しむことができるので、酵素風呂は魅力的な選択肢となるかもしれません。
酵素風呂は湯浴ではありません。ある意味で砂風呂や石風呂的な流れを含む日本の温浴文化を継承しながら、現代的なライフスタイルにも適応した比較的新しい入浴カテゴリーです。日本の温浴文化は歴史の中に様々なバリエーションとその展開があり、様々なカテゴリーが併存しながら現代へと繋がってきました。未来に向けて「酵素風呂」はその一翼を担い、今後多くの人々に広がっていくことを期待しています。
- 工事名称
- ひのきこうそぶろZEN内装工事
- 工事場所
- 神奈川県藤沢市藤沢1015-14 2F
- 主要用途
- 酵素風呂
- 改修面積
- 76 m2
- 構造規模
- RC地上8階建ての2階部分
- 設計期間
- 2019年12月~2020年8月
- 工事期間
- 2020年10月~2020年11月
- 施工会社
- ファーストエステート株式会社
- 設計監理
- 株式会社今井健太郎建築設計事務所
(担当:今井健太郎、松本道枝) - 写真撮影
- 鈴木賢一写真事務所
- URL
- https://www.hinokikousoburo-zen.com