えごた湯(Egota-yu)は昭和51年に建てられた二階建ての共同住宅築の地下に設定されたビルイン型の銭湯です。改修のお話をいただいた当時は、前回改修工事から約20年ほど経過していました。改修前の施設は白を基調とした内装で、かつ照明もかなり明るめに設定されており、地下空間特有の「閉鎖感」を感じさないための設計意図を強く感じる内容でした。
しかし今回の改修計画では「地下にある銭湯」という条件を逆に生かす方向で設計イメージを模索し、その結果デザインコンセプトを「GEO銭湯」と設定しました。GEOとは、地球、地形、地面などを意味する英語です。銭湯を「地球内部に現れたオアシス」や「洞窟にある神聖な泉」などのイメージになぞらえ、エントランスからまるで地球の内部に入っていくような、あるいは大地に包みこまれるような空間づくりを目指しました。
実際の計画の中では、内装材全般に「土」っぽさを感じる左官素材や、色ムラのあるタイルを用いることで、エントランスの階段部分から地球の内部に入り込み、地球を感じるような世界観をイメージする演出としています。また浴室の照明計画においては、水の透過とダウンライトの反射により生じる「水面のゆらぎ現象」をアクセントとしたデザインとしました。天井や壁に反射する水面~光のゆらぎは、常に変化する自然界の基本エッセンスを表象すると同時に、空間に視覚的な癒しの効果をもたらします。素材の選択と光演出の選択によって空間全体にgeo感=「大地や地下を想起させる空間」を紡ぎ出すことに専心しました。
このように、えごた湯(Egota-yu)の改修においては、一見ネガティブに思われる地下という特異な環境条件を、ポジティブな方向に生かす空間を創りとすることを意図した設計となっています。「洞窟にある神聖な泉」という、一見風がわりな銭湯空間のイメージは、それが地下空間にあることで、逆に魅力的なエレメントとして機能するのです。そしてその結果、えごた湯では他の銭湯ではなかなか見られない、唯一無二の世界観が銭湯空間に組み込まれる形となりました。