渋谷区の改良湯は、2018年に弊社が改修の担当をさせていただいた銭湯です。竣工当初は大変な好評をいただき、その後サウナブームもあって、サウナを利用するために入場制限が発生してしまうという事態が生じていました。その後オーナー様から「混雑緩和のため、階段下や倉庫などの余剰スペースを使って男湯側の拡張工事を行いたい」というご要望をいただいたのが2021年のことでした。弊社としては改修担当した銭湯が評判となり、混雑緩和のための改修工事を数年内に再依頼していただくということは大変光栄なことです。改良湯の2022工事は、弊社とって初めての「2回目の改修設計の銭湯」となりました。
2022年の改修工事内容は基本的に男湯のみの改修となりました。まず男性浴室に併設されていた階段下の倉庫スペースが外気浴場として追加拡張されました。そして、水風呂を移設してサウナ室を拡張しました。その代わりにカラン数が16から11に減設となりました。
さてサウナブームの影響から、サウナ空間の仕様やデザイン、とりわけストーブに対する関心も当然高まっています。今回オーナー様から電気式ロウリュ仕様のストーブを採用したいとのリクエストをいただいておりました。ロウリュ仕様のストーブは電気式が多いのですが、今回の改修では受電容量のアップが難しかったためガス式が選択されました。銭湯は給湯量が多く、基本的にはガスで湯を沸かすため、ガス式ストーブは銭湯に採用されやすいという事情があります。しかしながらガス式のロウリュ仕様ストーブに関しては、ベンチ下に放熱管を設置する必要があり、レイアウトおよび照明との関係を含めた納まりに制限が生じ、設計面では大変苦労しました。照明計画に関しては、利用者相互の表情や存在感などなるべく気にならないよう、足元にのみ照明を設定するデザインとしています。
銭湯サウナの場合、専用外気浴場があるのは今のところかなりレアケース。都内の銭湯では敷地に余裕があることは少なく、もしあっても露天風呂が選択されることが多かったからです。改良湯の場合は、幸運にも浴室に隣接する余剰スペースを有効利用することができました。サウナブームにより銭湯設計の場面でもスペースに余裕がある場合は「露天風呂ではなく専用外気浴場を」という要望が今後増えていくと思われます。外気浴場は露天風呂をつくるより設備が少ないためコスト面においても断然有利。いずれにしろ都心部に立地する銭湯においては、ほんのわずかな空間も活かしきる設計が求められます。